鼻濁音に思いを馳せて・・・?

口音と鼻音 ボイトレジム

このタイトルの使い方が合っているかどうかは、日本語教育と声に携わる端くれとしていささか疑問が残りますが、それはそれとして・・・。

今回は、鼻濁音びだくおんについてです。鼻濁音に関しましては、ボーカル、ナレーター、声優志望問わず、若い人たちの方が出来ないといわれています。

分野別でいうと、若い人たちの中でも話し言葉の分野(ナレーター、朗読、声優志望)の人たちの方が指摘すると気をつけているようです。

この鼻濁音、プロのナレーター、アナウンサー、演者は避けては通れない発音スキルです。

意外と無頓着なのはボーカリストのようです。まあ、昭和歌謡や演歌を歌っている人ばかりではないので、濁音でも問題ないと言えば問題ありません。

この鼻濁音、いずれは消えてゆく音だと言われています。消えていく前に思いを馳せながらひと言ふた言、鼻濁音を使えていない皆さんに申し上げたいと(←やけに丁寧)記事を書きます。

鼻音という調音法

僕は、鼻濁音を小学校低学年(1年生)の頃に言われていました。小学校1年生の時、とてもご年配の先生で「いくゑ」というお名前の先生でした。この「ゑ」を名前に使っているのを見て、かなりのご年配ということが推測できるでしょう。先生から教わったことで、当時はほとんどのクラスメイトが出来ていたと記憶しています。

鼻濁音は別の呼び方があり、ガ行鼻濁音ガ行鼻音ともいいます。

音声学でいう鼻濁音は別の名前があって

(有声)軟口蓋鼻音

といいます。

音声学・音韻論に基づいて正しくいうならば、子音の名前はその分類に基づいています

① 声帯の振動があるか?ないか?有声音無声音
② 上あごのどこで音が作られるか?➡調音点
③ どのような音になるのか?➡調音法調音様式とも)

これら3つの分類条件で子音が決まるわけです。鼻濁音は、

声帯振動があるので有声
作られる場所は
軟口蓋
どんな音になるのかは鼻音 
 です。

鼻音有声音しかないので、あえて有声という必要はないため(  )内に入れました。

専門的で難しそうですね。でも覚えておいた方が絶対に得だと思います。

どこで声が出ているのか?
体験レッスンを受講される方の中には、次のような質問をしてくる方がいらっしゃいます。それもかなりの確率で、です。 いやいや、喉を使っているから、声帯振動のあるなしで声は出るんでしょう。 この答えは確かに当たっていますね。 しかし、こちらが言い方を替えて訊ねてみると、発声と発音とを混同して使っているよう...

口音と鼻音

上の図Aが[k]カ行、[g]ガ行の子音をいう時の口腔内の様子、図Bが鼻濁音を発するときの口腔内の様子です。鼻濁音の音声記号は[ŋ]です。

さて、図A図Bではどこが違うでしょうか?

鼻腔への通り道が塞がれている(閉じられている)のが図A、鼻腔への通り道が開いているのが図Bです。ピンクの色で塗られている部分の違いが判りますよね(笑)

鼻濁音になる音、ならない音

聴いている人の耳にス~ッとはいってきますし、何よりも日本語の持つ柔らかな音色、母音とブレンドされた響きの艶っぽさが出てきます。

これはどこのサイトやYou Tubeを観ても出ている内容なので、

今さら、、、。

と感じるかもしれませんが、確認の意味で載せておきますね。

鼻濁音にならない音
語頭国人」「行」
複合語「高等|校」
数字の五55分」
外来語「プロラム」「アフニスタン」(鼻濁音化している人も)
オノマトペル」

 

鼻濁音になる音
語中「今」/語尾「あなたか゜」 *か゜=鼻濁音表記
複合語「株式会社
数字の五「七三」「十夜」
外来語「オルン(オルカ゜ン)」「イリス(イキ゜リス)」
*キ゜=鼻濁音表記 ほとんど日本語として定着している語

アクセント辞典では、鼻濁音の表記は「ガ  ギ  グ  ゲ  ゴ  」ではなく、「カ゜キ゜ク゜ケ゜コ゜」です。

調音点が少し前なのかもしれない

口音と鼻音

さて、何故若い人にとって鼻濁音はやりにくいのか?室長なりの考え方をまとめてみました。あくまでも推論です。でもやってみると納得できると考えています。

無声軟口蓋破裂音[k]や有声軟口蓋破裂音[g]、そして軟口蓋鼻音[ŋ]も奥舌(後舌)が軟口蓋(上あごの奥のプニプニした柔らかい部分)に当たって発する音です。

図B

硬口蓋
歯茎硬口蓋 と言われる部分です。

「キ」「ギ」「キ゜」のイ段は調音点が前の方にずれ、口蓋化こうがいかという現象が起こります。

さぁ、鼻濁音のできるあなた、これを図Bの位置(硬口蓋)で鼻濁音の「カ゜」を発音できるでしょうか?

②の硬口蓋の部分で鼻濁音を行おうとしてもまず無理です。①の歯茎硬口蓋の部分ではますますできなくなります。

若い方たちは、カ行ガ行の調音点が軟口蓋ではなく、全体的に前の方に来ているのではないか?

そのように推測します。以前の鼻濁音練習では王道定番メニューであったガギグゲゴの前に「ン/N/」をつけ、「ンガ」「ンギ」「ング」「ンゲ」「ンゴ」とやってみたところで、鼻濁音にならない生徒さんが何人もいます。それはガ行の調音点が全体に前側に来ている、又は中舌が硬口蓋にあたる面積が広いからなのではないか?が推測です。生徒さんの割合でいくと、10人中8人の確率でそうなりますので、間違いともいえないでしょう。

ということは、鼻濁音ができるようになるためには、この逆をやればよいのです。もっと調音点を後ろ(軟口蓋側)にずらすのです。ただし、いきなりにずらそうとしても無理!

硬口蓋鼻音を子音に含む「ニ、ニャ、ニョ、ニュ」の練習をして舌が上あごのどの部分にあたっているかを確認しながら発音しましょう。これを調音点の確認といいます。

跳ねる音(撥音はつおん)の確認も大切

ここで、もう少し深堀をしたいあなたは、跳ねる音(撥音はつおん)「ン」にも目を向けましょう。

日本語の特殊拍のひとつですが、他には、伸ばす音(長音)「ー」詰まる音(促音)「ッ」の3つです。特殊拍を制する者は、歌がうまくなる!そう断言します!

👉 日本語の特殊拍

日本語の曲の中では、息継ぎ=ブレスのタイミングの次に確認処理しなければならない共通項目なのです。

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