前回は、『感情とメンタルトレーニング』というタイトルで、感情は非言語と言語のバランスによって醸し出されること。次に感情の種類や不安と緊張について語ったこと。そして下位区分として共感、同感、同情のこと。さらに逆U字仮説のことまで記しました。
▼感情とメンタルトレーニング
今回は『集中力』についてです。それでは始めましょう。
集中と注意
はじめにココを押さえておきましょう。集中の方法を語る前に、注意との比較対照を行なってみましょう。集中と注意は同じなのでしょうか?それとも違う意味として認識するのでしょうか?
今回のテーマをひとことで言うなら次のようになります。
- まず、メンタルトレーニング(メントレ)の分野でいう集中は注意とほぼ同じ意味合いで用いられるということ
- 次にもっと自分の声を好きになるための集中(=注意)の方法とは、自分の声を聴いたり観たりすること
これらふたつに集約されます。
集中力=注意力をつける意味
さて、この記事では集中力を注意力と書き換えて進めていきます。注意力をつける意味、つまり注意力のコントロールをする目的としては、以下の5つが挙げられます。
- 安心感、不安感、緊張感、リラックスを切り替えられる
- 余計なことに気をとられないで済む
- いったん途切れても注意が復活できる
- 歌っているときに意識を向ける対象、方向、範囲、程度などを必要に応じて切り替えられる
- その他、表現者が意味を見つけている項目
とりわけ4については、歌だけでなく、楽器を演奏するプレーヤー、役者、声優、キャスターやナレータ、司会者など、公な場面で声を使う場合にも当てはまりますよね。
注意力を高める3つの視点
ここで注意の定義づけをしておきましょう。メントレ分野での用語解説を参考にしています。
【注意】
ある瞬間や特定の課題に意識を向けていること。または考えていること。
この注意力を高めるためには3つの視点からのアプローチが必要になります。それは
- 注意の準備
- 注意の選択
- 注意のキャパ
これら3つです。
その1 注意の準備
やはり注意力をつけるためには、それなりの準備は必要になってきます。これは『注意力をつける意味』の項目中4(方向、範囲、程度など)とリンクします。
とにかく、『注意力をつける意味』1と2と3は4の繰り返しでコツコツと築き上げることで養われていきます。いわば場数です。この場数を踏むことで次のステップ『注意の選択』が強化されてきます。
その2 注意の選択
状況に応じて、または関心や好みに応じて取捨選択していきます。なお、関心や好みで選択する注意力よりも、状況に応じて選択する注意力の方がエネルギーを使います。
何故なら、本番中に予期せぬ出来事に見舞われるかもしれないリスクが潜んでいるからです。常日頃、アクシデントを想定したリスク管理に目を配りましょう。そうすれば本番に慌てずに済みます。
その3 注意のキャパ
このように注意力を高めるためには複数課題の同時進行は大切。とはいうものの、注意力にはその人に応じたキャパがあります。一度に幾つも注意を向けている状況だと、いわゆる
注意力散漫!!
になってしまいます。
これらのコントロールのために、ワンバイブスではイメージトレーニングと体のトレーニングをブレンドさせた、さらに条件を増やしていく練習をレッスンで行なっているのです。例えば発声練習の段階から実際に歌っている時も3つの視点(注意の準備、選択、キャパ)からのアプローチは怠っていません。
声をコントロールする力を高めよう
それでは、これまでのまとめです。
要するに注意力とは『声をコントロールする力を高めるための力』なのです。高めてゆくには、トレーナーや相方とのロー・プレ(ロール・プレーイング)、あるいは一人で歌っている時、人に聴いてもらったり観てもらうことが良いとされています。
個人練、自主練 の記事にも書きました。自分自身の声を聴くのが嫌いとは言わず、聴くのが嫌なら声を観て(観察して)みるのです。こうしないとメントレどころか声の上達もままならないからです。
(つづく)