新しい母音発見?!その名も・・・

vowel_chart_nakajita ボイトレジム
中舌母音の範囲は広い領域となる

みなさまに発表があります。

室長は新しい母音を発見しました!

その名も、

中舌母音(なかじたぼいん)といいますwww

音声や音韻のことをご存知の皆さまにとっては、

音声音韻をご存知の読者の皆さま
ウソをつくな!コラアッ!
<`´>

と、お叱りの声が聞こえてきそうです。

ただし、こんな事を思っている方もいらっしゃるでしょう

音声学をご存知ない読者の皆さま
中舌・・なかじた?ちゅうぜつ? 何?その母音って・・・

はい。この中舌母音、知らない方にとっては新鮮に感じるのではないでしょうか?

この中舌母音のこと知って使ってみる。特に歌う時に使ってみる事をお勧めします。

J-Popやアニソンをはじめとする日本語での歌限定となってしまいますが、この際、歌に使ってみましょう。

そうすると、あなたの歌に新しいスパイスが注入される事になるでしょう。

中舌母音と母音の中舌化♪

中舌母音の事を説明する前に、母音の復習をしておきましょう。

☑ 母音どうし、つまり母音と母音の間には、明確な音の切れ目や句切れがない

母音の順番が「あいうえお」なのは何故?
これは素朴な疑問ですね。 検索してみると何故「あいうえお」なのかがたくさんでてきます。ここでは、発声や発音に関連することを自分なりにまとめてみました。 母音の並び方と「あいうえお」♪ 母音の定義 まず、母音とは何だ?ということをおさえておきましょうか。 トレーナー 母音ってなあに? と生徒さんに尋ね...

☑ 上の事実から、母音の数は必ずしも5つとは限らない

母音の数と発する順番
日本語の母音はいくつある?♪ 日本語には5つの母音があります。これはどのボイトレ本にも書かれてあります。 この5つは共通語の母音の数で、実際には地方によっては、もっと多くの母音で話す地域があるのです。 母音を6つ以上使って話す地域が日本にあった! さて、どの地域でしょう? 【一部引用】NHK放送文化...

☑ ひとつの母音の守備範囲は広く、共通語としても使われている関東方言では、「ウ段」が中舌化する

母音の守備範囲は広いよ
​コーラスで「ウーアー系」って言いますよね。 歌詞をハモる「字ハモ」と違って、白玉として伸ばす音が「ウー」や「アー」の音です。 ところが特にこのウ段、時々歌っていると出しにくい事ってありませんか? 「ウ段」と「ア段」には、音の守備範囲が広いといった特徴があるんです! 日本語の母音は守備範囲が広い。 ...

音声初心者の方でも何となく推測はつくと思いますが、「ウ段」の中舌化と中舌母音は関係があります。

ただし、ウ段だけではなく、[i]―[e]―[a]―[o]―[ɯ]全ての母音に当てはまる関係性です。

中舌母音とは?その範囲

vowel_chart_nakajita

中舌母音の範囲は広い領域となる

よく母音の三角形とか、母音の逆三角形で舌の位置の図を簡易で描かれていたり、口腔断面図で描かれていたりします。

まず、母音の調音の位置を上の図で確認してください。

中舌母音の範囲は、緑の線の中の全部の範囲だといわれています。

広い範囲の中で作るのが中舌母音なのです。言い換えると赤丸で載せてある母音以外で、緑の範囲内にある母音は全て中舌母音ということなのです。

子音の場合は、狭められたり、閉ざされたりしてできる音なので調音点といいます。

母音の調音位置なんですが、子音と異なり調音点がありません。

クリックという先生もいらっしゃいますが、音楽をやっているあなたにとっては、リズムのクリックと迷いやすいのでここでは調音点としておきましょう。

母音の調音位置(舌の位置)は特に前の母音に影響を受けやすくなります。

例えば、

担当トレーナー
家(いえ)の[i]の母音、その舌の位置を確認してください。
担当トレーナー
今度は青い(あおい)の[i]の母音、その舌の位置を確認してください。

「青い」の[i]のと「家」の[i]、このふたつ、調音位置が違いませんか?

「青い」の[i]の方が「家」の[i]よりも舌の位置が下にきていませんか??若干なんですが、分かりますかね?

実は日本語の方言の中にたくさん表れている

中舌母音というのは、日本の各地方の方言の中に出てくる母音なのです。

例えば

関東方言に出てくる「ス」「ズ、ヅ」「ツ」。中舌化といわれている音ですね。

東北地方の中舌母音。よく言われるズーズー弁なのかジージー弁なのかです。岩手県沿岸の北部方言では、非ズーズー弁というらしいです。

島根県民の方も中舌母音が目立つ発話をされています。

さらに、中舌母音の宝庫となっている地域があります。それは、琉球地方の中舌母音です。

奄美名瀬地域の方言、南琉球新城方言、そして南琉球の大神方言です。

先日、これらの中舌母音で発する言葉を音声で聴く機会に恵まれました。

聴いてみたところ、もう何を言っているのか分からない!そんな発話もありました。

室長
ああ、日本って広いなあ。

そう感じた瞬間でした。

歌ではどうやって使うの?

以前レッスンの中で生徒さん方に

「ウ」の3段活用と名付けて、中舌化を試したことがありました。

高音域の「ウ段」をどうやったら出しやすく、響きやすく、聞き手に届きやすい声になるのか?

J-Popなんですが、いろんな課題曲を聴き比べながら、自分でも試しながら「あーでもない、こーでもない」とやっていました。

先にも書きましたが、関東方言に出てくる「ス」「ズ、ヅ」「ツ」は中舌化されます。

ところが同じ関東圏出身の生徒さんでも、中舌化の「ウ」が体感できたり分からなかったりするんです。

母音の守備範囲は広いよ
​コーラスで「ウーアー系」って言いますよね。 歌詞をハモる「字ハモ」と違って、白玉として伸ばす音が「ウー」や「アー」の音です。 ところが特にこのウ段、時々歌っていると出しにくい事ってありませんか? 「ウ段」と「ア段」には、音の守備範囲が広いといった特徴があるんです! 日本語の母音は守備範囲が広い。 ...

これは仮説ですが、

中舌の範囲は地域性よりも、その人個人によって違うのではないか?

と考えました。

歌のレッスンの場合、1回毎の歌の安定感という事にも関係してきます。

1回目に歌った出来栄えと2回目に歌った出来栄えが全く同じという事は、ほぼないでしょう。もちろん、近づけるためにトレーニングを行なうわけなんですけどね。

今、たまたま中舌化する「ウ」のことについてお話していますが、他の中舌母音もあるのは説明したとおりです。

そういった試行錯誤をして幾つか歌に活かせるんじゃないか?

そう考えた項目をお話します。参考にしていただければと思います。


バラードのAメロなどでそっと言葉を置いて歌いたいとき。
●バラードを歌う時は、先ず言葉を丁寧に置きましょう。
丁寧とは、ただ母音を伸ばせば良いってものではありません。日本語のデメリットをメリットに変えていきましょう。

曖昧な感じで歌いたいが言葉の粒立ちは残しておきたいとき。
●英語の場合には曖昧な母音が在るように、音の違いが意味の違いを引き起こしやすくなります。ところが日本語の場合は、「阿佐ヶ谷、あざみ野」を平口で言っても、唇を丸めて言っても意味は同じです。ハッキリ言っても曖昧に言っても同じなのです。

このいい加減さ(笑)を歌に使ってみましょう。結構フィーリング良くなりますよ。

高音域に撥音(跳ねる音「ン」)が出てきて、声が出にくい、音の処理に困るとき。
●安室奈美恵さんが一昔前によく使っていたテクニックです。鼻腔共鳴をさせながら中舌母音の「ウ」を使う事で「ン」の響きを安定させています。僕はこれを安室ちゃんの「ン」と言って 生徒さんに試してもらっています。

そういえば安室ちゃん、沖縄出身でした!母音の中舌化を使うのは得意なはずですね♪

先ほどの、母音が中舌化されやすい地域を参考にしてください。

発声そのものをストレートに前に出さずに、口腔内で響かせている歌い方をすると、中舌母音が体感しやすい。
●声を口の中に当てているという言い方の方が分かりやすいでしょうか?口の中の空間を保ち、下の動きで一語一語の音を作っていきます。上の図の緑の範囲内で歌ってみるのです。そうすると、そんなに口を開かなくても歌えるから面白いです。オペラっぽいかもしれません。

発話発語の場合、ちょっと腹話術っぽくもなりますね。

口を開けて発声しましょう
ボイストレーニングで、特に発声と発音を絡めたメニューは、唇、舌を使って行うことが多いです。 舌、特に舌根を柔らかくすることは、滑舌が良くなるだけでなく、良い発声を助ける上で大切なことです。 別な言い方をすれば、唇、舌を柔らかくして発音する努力をすれば、発声はそれを応援しようと連動してくれる。というわ...

まとめ

当然のことですが、音声というのは話しことばでも歌うときでも1回毎に揺らぎがあります。

それで、1回だけで聴いて判断すると信頼感に欠けることも出てきますので、トレーナーは以下のことに注意して生徒さんの声を聴くとよいでしょう。

  1. 課題となっている文章やフレーズを最低3回は繰り返す
  2. 自分の耳だけを信じない。2人以上のトレーナーの耳で聴いて耳の調節を行なう

1.に関しては、スマホで録音した音声を生徒さんと一緒に聴いて吟味する事も大切ですね。

2.に関しては、ご自身の発話や歌をチェックするといったモニターの機能といった意味も含まれています。

【中舌母音の範囲】中舌母音=非前舌+非後舌

ココが中舌だといった明確で明瞭な位置の固定はなく、広い領域をカバーする。

参考資料:大野眞男教授(岩手大学)
日本音声学会第27回セミナー『日本語諸方言の中舌母音の新古を問う』

是非、色々と試して歌に使ってみてください。あなたの歌が変わるかもしれませんよ。

タイトルとURLをコピーしました